働き方改革により、副業を解禁する会社が増えています。しかし、日本では労働基準法で労働時間が管理されており、副業に関するルールも定められています。
ルールを知らずに副業を始めてしまうと、就業規則を破るだけでなく自分自身を追い詰めることになるかもしれません。そこで本記事では、副業に関する労働時間管理や見直されたガイドラインやメリット、デメリットを解説します。
この記事を読めば、正しい労働基準法を知れて正当な報酬を会社から受け取れるように対策できます。
副業を始める前に把握しておきたいルール

副業には法律に定められているものや会社の就業規則などさまざまなルールがあります。もし、副業を始めようと考えているのであればルールを確認しておくとよいでしょう。ここでは労働時間に関するルールを解説します。
労働基準法で定められた「労働時間の原則」
労働時間は労働基準法と言われる法律で決められています。その労働基準法では1日8時間、週40時間を超える労働は原則禁止です。
労働時間外の時間をどのように利用するかは労働者の自由です。しかし、各企業においてその自由を制限することが許されている場合もあるので必ず会社の規定を確認しましょう。
- 労働提供上の支障をきたす場合
- 業務上の秘密が漏えいする恐れがある場合
- 競業により自社の利益を害する可能性がある場合
- 自社の名誉や信用を損なう行為、信頼関係を失う行為がある場合
副業について現状多くの企業では、就業規則で禁止または許可制としているのが一般的です。しかし、上記の例を除けば副業は労働者の自由となっています。また、働き方改革の観点から労働者が多様な働き方を選べる環境づくりが重要となっており、副業のルールを禁止から認める方向に検討する会社が増えています。
副業に適用される「通算ルール」
副業をするのであれば、本業の仕事が終わった後や本業の仕事が休みの日に働くことになります。この場合、労働時間は両社それぞれでカウントされると思われがちですが「労働時間は通算する」と労働基準法で決められています。

例えば本業である企業Aで5時間働き、同じ日に副業先の企業Bで4時間働いたとすると、労働時間は通算されるため、9時間働いたことになります。
労働基準法では1日の労働時間は、8時間までと決められているため、1時間は法定労働時間外の勤務となります。
ただし、労働基準法が適用されないケースもあります。
- フリーランス
- 経営者
- 理事
- 監事
- 水産業に従事する者
- 農業に従事する者
- 管理監督者
- 機密事務取扱者
- 高度プロフェッショナル制度対象者など
上記の職業は労働基準法の労働時間制度が適用されないため、労働時間が通算されません。
法定労働時間を超えた場合の「通算割増賃金」
就業時間が法定労働時間を超えた場合は、2割5分増し以上の割増賃金、いわゆる残業代が支払われます。これは厚生労働省が定める「副業・建業の促進に関するガイドライン」で定められています。
①労働契約の締結した順に所定労働時間を通算し、法定労働時間を超える部分がある場合は、あとから労働契約を締結した方が支払義務を負う
②所定外労働が発生した順番に労働時間を通算し、法定労働時間を超えて働かせた場合には、当該所定外労働をさせた方が支払義務を負う
①では労働契約の締結順がポイントです。例えば、最初に契約した企業Aで5時間勤務をしている社員が、同日に企業Bで4時間勤務という契約をする場合、後から労働契約を結んだ(雇い入れた)企業Bが法定労働時間を超過した1時間分の割増賃金の支払い義務を負わなければなりません。
②では所定外労働の発生した順番がポイントです。例えば、①の社員が企業Aで2時間の残業をした場合、企業Bと通算した労働時間が法定労働時間の8時間を超えているので、1時間分の割増賃金の支払い義務は企業Aにあります。
①は契約時点、②は実際働いた際に発生するということになります。いずれも企業Aと企業Bが社員の契約時期や所定労働時間、実際の残業時間を正しく把握していることが前提として必要です。しかし、現実はほかの企業と労働者の就業時間を把握することは難しいと言われています。
そこで重要になるのが労働者からの自己申告です。自己申告は、通算ルールを正しく行うために必要なことですが、残業代を支払わなければいけなくなる会社が出てくるため、副業としての採用に不利となる懸念も生じるのが事実です。
管理モデルのガイドラインとは

労働者からの申告で、本業と副業の労働時間を正しく把握できるとよいのですが、実際に情報共有を継続していたり、把握したりすることは企業側も労働者側も負担となります。
そこで、厚生労働省では企業・労働者の負担を軽減し、労働基準法を順守しやすくなる簡単な労働時間管理方法「管理モデル」の導入を推奨しています。
見直しされた点

管理モデルでは1日の労働時間ではなく、月単位で設定した労働時間の上限という考えに見直されました。副業の開始より先に契約した企業Aの法定外労働時間と後から契約した企業Bの労働時間を通算して、法定労働時間を超えた時間数が時間外労働の上限となります。
時間外労働の上限とは「単月100時間未満、複数月平均80時間以内」です。そのうえで、それぞれの企業が設定した労働時間の範囲内で労働させるという方法が「管理モデル」です。
管理モデルを導入することによって、副業による他社の労働時間を把握しなくても労働基準法をクリアできます。

管理モデルの注意点
もし管理モデルによって副業を行う場合は、本業先が労働者を通して副業先に管理モデルの申込と受諾を得なければなりません。割増賃金を払うことになるB社が応じるかどうかはともかく、管理モデルを導入することで適正な労働時間管理が可能になります。
副業を行うことによって発生するメリット・デメリット

副業を行うことで収入が増えたり、キャリアアップしたりとメリットがある反面、健康不良や時間管理の難しさを感じるデメリットもあります。ここでは、副業のメリット、デメリットを紹介しますので、参考にしてください。
【メリット】収入が増える
副業のメリットといえば、収入が増えることです。副業を始めるきっかけとして、収入を増やしたいと考えるケースが多いでしょう。また、副業で収入が増えると、生活費の補填や趣味に使えるのはもちろん、本業での収入が減った時や受け取れなくなった場合のリスク管理にもなります。
【メリット】キャリアアップできる
副業は本業では得られない知識や経験を得ることができ、自分自身のキャリアアップにも繋がります。自分のやりたいことを副業に選べば、将来の起業や転職を視野に入れたチャレンジもできるでしょう。
【デメリット】過労による健康不良を起こす可能性がある
副業を始めると必然的に長時間労働になってしまい、体調の管理が難しくなるかもしれません。休息時間が確保できなければ疲れが蓄積してしまい、心身ともに健康不良を起こす可能性があります。
【デメリット】プライベートな時間が少なくなる
長時間働いていると、プライベートな時間が少なくなってしまいます。趣味や娯楽を楽しみたいと感じている人には、仕事以外の時間が少なくなってしまうことでデメリットと感じるかもしれません。
副業の時間管理に便利なアプリ

副業を始めるなら、労働時間の管理をしなくてはいけません。しかし、本業と副業で忙しい場合、しっかりと管理することが難しいでしょう。そこでおすすめなのが副業の時間管理に便利なアプリの活用です。
まとめ

働き方改革により、副業を始める人は今後増えてくると考えられています。収入の増加やキャリアアップに繋がる副業は、生活や自分自身を高めてくれる新しい生活様式になるでしょう。副業を始めるなら、労働基準法で定められた労働時間を把握することが重要です。副業に関するルールを身に付け、時間管理をしっかりと行いましょう。